「外郎売りの科白」
(ういろううりのせりふ)

「外郎売り」はきっと宙でも言えるくらい何度も練習なさいませんでしたか。
アナウンスや演劇などの基本を身につけている人にとって、どれだけ悩まされたカツゼツのお勉強。

「外郎売りの科白」本文に読み仮名をつけました。
なお、ふりがなの関係で、きれいに観られるようにブラウザの調節をしてください。
印刷してどこにでも貼れるように、注釈や現代語訳などはつけませんでした。
印刷用の「外郎売りの科白」をご用意いたしました。【外郎売りの科白」印刷用
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ふりがなは、私の教本に忠実に振りましたが、間違っているようなら、ご一報を。
あと、鼻濁音は、「カ゜、キ゜、ク゜、ケ゜、コ゜」で表しました。
母音の無声化は、みなさんで思い出してください。

って、素人の方には分からないことですね、失礼n(_ _)n

最初は、ゆっくりでいいのです。
正確にとにかくゆっくり感情も込めずに最後まで読んでみてください。
まずは正確な発音が大切です。正確な発音もできないのに早口で"読んで"も意味がありません。
覚えるにつれ、だんだん早くしていきましょう。
ご健闘をお祈りします。


(平成17年6月 修正)


「外郎売りの科白」
「ういろううりのせりふ」

二代目 市川団十郎


 拙者親方と申すは、お立ち会いの中にご存知のお方もござりましょうが、
 せっしゃ おやかたと もーすは、 おたちあいのうちに  ごぞんじの おかたも ござりましょーカ゜、

お江戸を発って二十里上方、 相州小田原一色町をお過ぎなされて
おえどをたって 20り かみカ゜た、     そーしゅー おだわら いっしきまちを おすキ゜なされて

青物町を登りへおいでなさるれば、欄干橋虎屋藤衛門、
あおものちょーを のぼりへ おいでなさるれば、 らんかんばし とらや とーえもん、

只今は剃髪致して円斎と名乗りまする。
ただいまは てーはついたして えんさいと なのりまする。

 元朝より大晦日までお手に入れまするこの薬は、
 がんちょーより おーつコ゜もりまで おてにいれまする このくすりは、

昔、ちんの国の唐尽、外郎という人、わが朝へ来たり、
むかし、ちんのくにの とーじん、 ういろーとゆーひと、わカ゜ちょーへきたり、

帝へ参内の折りからこの薬を深く籠め置き、
みかどへ さんだいのおりから このくすりを ふかくこめおき、

用ゆる時は一粒ずつ冠の隙間より取り出す。
もちゆるときは いちりゅーずつ かんむりのすきまより とりいだす。

依ってその名を帝より「とうちんこう」とたまわる。
よって そのなを みかどより 「とーちんこー」とたまわる。

即ち文字には「頂き・透く・香ひ」と書いて「とうちんこう」と申す。
すなわち もんじには いただき すく におい とかいて 「とーちんこー」ともーす。

 只今は、この薬、事の外世上に弘まり、方々ににせ看板を出し、
 ただいまは、このくすり、ことのほか せじょーにひろまり、ほーぼーに にせかんばんをいだし、

イヤ小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと、色々に申せども、
いや おだわらの、はいだわらの、さんだわらの、すみだわらのと、いろいろにもーせども、

平仮名をもって「ういろう」と記せしは、親方円斎ばかり。
ひらカ゜なをもって ういろーと しるせしは、おやかた えんさいばかり。

もしやお立ち会いの中に、熱海か塔の沢へ 湯治にお出でなさるるか、
もしや おたちあいのうちに、あたみか とーのさわへ とーじにおいでなさるるか、

又は、伊勢御参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。
または、いせ ごさんク゜ーのおりからは、かならず かどちカ゜いなされまするな。

お登りならば右の方、お下りなれば左側八方が八つ棟、
おのぼりならば みキ゜のかた、おくだりなれば ひだりカ゜わ はっぽーカ゜ やつむね、

表が三つ棟、玉堂造り、破風には菊に桐のたうの御紋を御赦免あって、
おもてカ゜ みつむね、ぎょくどーづくり、はふには きくに きりのとーの ごもんを ごしゃめんあって、

系図正しき薬でござる。
けーず ただしき くすりでござる。

 イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、
 いや さいぜんより かめーの じまんばかり もーしても、

ご存知ない方には、正身の胡椒の丸呑み、
ごぞんじないかたには、しょーしんのこしょーのまるのみ、

白河夜船、さらば一粒食べかけてその気味合いをお目にかけましょう。
しらかわよふね、さらば いちりゅー たべかけて そのきみあいを おめにかけましょー。

先ずこの薬をかように一粒舌の上にのせまして、
まず このくすりを かよーに ひとつぶ したのうえに のせまして、

腹内へ納めまするとイヤどうも言えぬは、
ふくないへ おさめますると いや どーもいえぬは、

胃・心・肺・肝がすこやかになりて
い・しん・はい・かんカ゜すこやかになりて

薫風候より来たり、口中微涼を生ずるが如し。
くんぷー のんどより きたり、こーちゅー びりょーをしょーずるカ゜ごとし。

魚鳥・茸・麺類の食い合わせ、その外、万病速効ある事神の如し。
ぎょ ちょー・きのこ・めんるいの くいあわせ、そのほか、まんびょー そっこーあること かみのごとし。

さて、この薬、第一の奇妙には、
さて、このくすり、だいいちのきみょーには、

舌のまわることが、銭独楽がはだしで逃げる。
したのまわることカ゜、ぜんコ゜まカ゜ はだしで にケ゜る。

ひょっと舌がまわり出すと、矢も楯もたまらぬじゃ。
ひょっと したカ゜ まわりだすと、やもたても たまらぬじゃ。

 そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。
 そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるは。

アワヤ候、サタラナ舌に、カ牙サ歯音、
あわやのんど、さたらなぜつに、かケ゜さしおん、

ハマの二つは唇の軽重、開合さわやかに、
はまの ふたつは しんの けいちょー、かいコ゜ー さわやかに、

あかさたなはまやらわ、おこそとのほもよろお。
あかさたな はまやらわ、おこそとの ほもよろお。

一つへぎへぎに へぎほし はじかみ、盆豆 盆米 盆ごぼう、
ひとつ へキ゜へキ゜に へキ゜ほし はじかみ、ぼんまめ ぼんコ゜め ぼんごぼー

摘み蓼 つみ豆 つみ山椒、書写山の社僧正、
つみだて つみまめ つみざんしょ、しょしゃざんの しゃそーじょー

粉米のなまがみ 粉米のなまがみ こん粉米の小生がみ、
こコ゜めの なかまカ゜み こコ゜めのなまカ゜み こんこコ゜めの こなまカ゜み、

繻子・ひじゅす・繻子・繻珍、
しゅす・ひじゅす・しゅす・しゅちん、

親も嘉兵衛 子も嘉兵衛、親かへい子かへい 子かへい親かへい、
おやもかへー こもかへー、おやかへー こかへー こかへー おやかへー、

古栗の木の古切口、雨合羽か番合羽か、
ふるくりのきの ふるきりくち、あまカ゜っぱか ばんカ゜っぱか、

貴様のきゃはんも皮脚絆、我等がきゃはんも皮脚絆、
きさまの きゃはんも かわきゃはん、われらカ゜ きゃはんも かわきゃはん、

しっ皮袴のしっぽころびを、三針はり長にちょと縫うて、
しっかわばかまの しっぽころびを、みはり はりなカ゜に ちょと ぬーて、

ぬうてちょとぶんだせ、
ぬーて ちょと ぶんだせ、

河原撫子 野石竹、のら如来 のら如来 三のら如来に六のら如来。
かわらなでしこ のぜきちく、のらにょらい のらにょらい みのらにょらいに むのらにょらい、

一寸先のお小仏に おけつまずきゃるな、細溝にどじょにょろり。
ちょっと さきの おこぼとけに おけつまずきゃるな、ほそどぶに どじょ にょろり。

京の生鱈 奈良生学鰹、 ちょと四五貫目、
きょーの なまだら なら なま まなカ゜つお、ちょと し ご かんめ、

お茶立ちょ茶立ちょちゃっと立ちょ茶立ちょ、青竹茶筅でお茶ちゃと立ちょ。
おちゃたちょ ちゃたちょ ちゃっと たちょ ちゃたちょ、あおたけ ちゃせんで おちゃ ちゃと たちょ。 

 来るは来るは何が来る、高野の山の おこけら小僧、
 くるは くるは なにカ゜くる、こーやのやまの おこけらこぞー、

狸百匹 箸百膳 天目百杯 棒八百本。
たぬき ひゃっぴき はし ひゃくぜん てんもく ひゃっぱい ぼー はっぴゃっぽん。

武具・馬具・ぶぐ・ばぐ・三ぶぐばぐ、合わせて武具・馬具・六ぶぐばぐ、
ぶク゜・ばク゜・ぶク゜・ばク゜・みぶク゜ばク゜、あわせて ぶク゜・ばク゜・むぶク゜ ばク゜、

菊・栗・きく・くり・三菊栗、合わせて菊・栗・六菊栗、
きく・くり・きく・くり・みきく くり、あわせて きく・くり・むきく くり。

麦・ごみ・むぎ・ごみ・三むぎごみ、合わせてむぎ・ごみ・六むぎごみ。
むキ゜・ごみ・むキ゜・ごみ・みむキ゜ ごみ、あわせて むキ゜・ごみ・むむキ゜ごみ。

あの長押の長薙刀は、誰が長薙刀ぞ。
あの なケ゜しの なカ゜なキ゜なたは、たカ゜ なカ゜なキ゜なたぞ。

向こうの胡麻がらは 荏のごまがらか、真ごまがらか、
むこーの ごまカ゜らは えの ごまカ゜らか、まごまカ゜らか、

あれこそほんの真胡麻殻。
あれこそ ほんの まごまカ゜ら。

がらぴいがらぴい風車、おきゃがれこぼし おきゃがれ小法師、
がらぴー がらぴー かざク゜るま、おきゃカ゜れ こぼし おきゃカ゜れ こぼーし、

ゆんべもこぼして 又こぼした。
ゆんべも こぼして また こぼした。

たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ、 
たーぷぽぽ、たーぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ、

たっぽたっぽ一丁だこ、落ちたら煮て食お、 
たっぽ たっぽ いっちょーだこ、おちたら にてくお、

煮ても焼いても食わぬ物は、五徳鉄弓・かな熊童子に、
にても やいても くわぬものは、ごとくてっきゅー・かなク゜まどーじに、

石熊・石持ち・虎熊・虎きす、
いしくま・いしもち・とらくま・とらきす、

中にも 東寺の羅生門には 茨木童子がうで栗五合 つかんでお蒸しゃる。
なかにも とーじの らしょーもんには いばらきどーじカ゜ うでくり ごんコ゜ー つかんで おむしゃる。

彼の頼光の膝元去らず。
かのらいこーの ひざもと さらず。

 鮒・金柑・椎茸、さだめて後段な、
 ふな・きんかん・しいたけ、さだめて ごだんな、

そば切り、そうめん、うどんか、愚鈍な小新発知、
そばきり、そーめん、うどんか、ぐどんな こしんぼち、

小棚の、小下の、 小桶に、こ味噌が、こ有るぞ、小杓子、こ持って、
こだなの、こしたの、こおけに、こみそカ゜、こあるぞ、こしゃくし、こもって、

こ掬って、こよこせ、おっと合点だ、心得たんぼの川崎、
こすくって、こよこせ、おっと がってんだ、こころえ たんぼの かわさき、

神奈川、程ガ谷、戸塚は、走って行けば灸を摺りむく、
かなカ゜わ、ほどカ゜や、とつかは、はしっていけば やいとをすりむく、

三里ばかりか、藤沢、平塚、大礒がしや、
さんりばかりか、ふじさわ、ひらつか、おーいそカ゜しや、

小磯の宿を七ツ起きして、早天早々相州小田原とうちん香、
こいその やどを ななつ おきして、そーてん そーそー そーしゅー おだわら とーちんこー、

隠れござらぬ貴賎群衆の、花のお江戸の花ういろう、
かくれござらぬ きせん ぐんじゅの、はなの おえどの はな ういろー、

あれあの花を見てお心を、おやわらぎゃっという。
あれ あのはなをみて おこころを、おやわらぎゃっという。

産子、這う子に至るまで、此の外郎の御評判、ご存知ないとは申されまい。
うぶこ、はうこに いたるまで、この ういろーの ごひょーばん、 ごぞんじないとは もーされまい。

まいつぶり、角出せ、棒出せ、ぼうぼうまゆに、
まいつぶり、つのだせ、ぼーだせ、ぼーぼーまゆに、

臼・杵・すりばち、 ばちばちぐゎらぐゎらと、
うす、きね・すりばち、ばちばち ぐわら ぐわらと、

羽目を弛して今日お出での何茂様に、上げねばならぬ売らねばならぬと、
はめを はずして こんにち おいでの いずれもさまに、あケ゜ねばならぬ うらねばならぬと、

息勢引っぱり、東方世界の薬の元締め、薬師如来も照覧あれと、
いきせー ひっぱり、とーほー せかいの くすりの もとじめ、やくしにょらいも しょーらんあれと、

ホホ敬って、ういろうは、いらっしゃいませぬか。
ほほ うやまって、ういろーは、いらっしゃいませぬか。


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